文部科学省は12月21日、2024年度の全国学力・学習状況調査を4月18日に実施すると、全国の都道府県教委に通知した。この結果は例年、文科省が都道府県・政令指定都市別の平均点を公表し、都道府県によっては市町村別の平均点も公表されている。各市町村の判断によっては、さらに学校ごとの公表も可能だ。元文部科学省キャリア官僚の寺田拓真氏(現・広島県総務局付課長)は、こうしたランク付けは「ナンセンス」であり「アンフェア」だと訴える。それはなぜか? 寺田氏の新著『教育改革を「改革」する。』(学事出版)より一部を抜粋・再編集し、お届けする。(JBpress)
(3回目/全3回)
#1 “誰一人取り残さない”はずが格差拡大?ICTによる個別学習がはらむ副作用
#2 楽しそう!でも続かない…個別ICT教育に内在する教育格差“再生産”システム
教育改革のカギを握るのは「教師の成長」
僕の夢は「子どもの自殺をゼロにすること」、そして僕のビジョンは「学校を、もっともっと『自由な場』にすること」です。そのためには、表面上の取組ではなく、その根っこにある学校のインフラストラクチャー、すなわち「前例踏襲と横並びの学校文化」を変える必要があります。
ですが残念ながら、トップダウンによる改革には、この文化を変えることはできず、むしろより強固なものにしてしまいます。そうではなく、必要なのはボトムアップの改善なのですが、こちらも残念なことに、現在の学校や教師には、自分自身が変化し、学校文化を変化させていくために必要な「四つのリソース」(カネ、ヒト、盾、自律性)が、いずれも決定的に不足しています。
これを打破するための道として、本書『教育改革を「改革」する』では教師の「真の専門職化」を提案しています。
ここでもう少し突っ込んで、「四つのリソースの欠如」を乗り越えるために、なぜこれが必要なのかについて説明したいと思います。こちらの図は、「四つのリソースの欠如」の関係性を整理したものです。
※外部配信先で画像が表示されない場合はJBpressオリジナルサイトでご覧ください。
ご覧の通り、四つの要素は互いに作用し、絡み合っています。しかし、ここで注目していただきたいのは各要素の中央、互いをつなぐものとして「成長の機会の欠如」が存在していることです。
これまで教育行政や政治は、様々な法令や通達やプランを策定したり、(競争と管理による)プロジェクト型の予算を立案したりして、現場の改革を(半ば強引に)促してきました。しかし、この状況を真に改善するために必要なもの、それは、直球ど真ん中である「教師の人材育成」だと僕は思うのです。
言ってしまえば、教育の危機を救うのは、やはり教育の力。つまり、鍵を握るのは、「教育行政として、教師に対して、どれだけ成長の機会を届けられるか」だと考えます。