年が明けると大学入試共通テストが目前に迫り、本格的な入試シーズンに突入する。今年の現役受験生はコロナ禍で中学・高校時代を過ごし、オンラインでの学びを余儀なくされた学生がほとんどだろう。この、ICTを活用した個別学習。学びの環境格差を埋め、平等な学習機会を提供するもののように見られがちだが、本当にそうか?むしろ「副作用の存在」があると指摘するのが、元文部科学省キャリア官僚の寺田拓真氏だ。新著『教育改革を「改革」する。』(学事出版)より一部を抜粋・再編集し、お届けする。(JBpress)
(1回目/全3回)
70年前の「個別最適な学び」?
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これは、今から遡ること約70年前、1950年代に、ハーバード大学教授のSkinner(B. F. Skinner)が開発した「ティーチングマシン」という機械です1。この機械では、まず、特定の問題が表示され、学習者が回答を記入した後、ハンドルを回すことにより正答が示されます。
正解だった場合には、レバーを動かすと次の問題が表示され、これらは段階的に難しいものとなっていきます。写真にある通り、生徒たちはクラスで同じ機械を使って同じように学んでいますが、解いている問題は、個々の生徒で異なります。すなわち生徒たちは、自らのペースで、自らのレベルに合った難易度の問題を学ぶことができます。
どうでしょう? これは皆さんの考える「個別最適な学び」の理想像に近いですか?