カスハラ問題を「老害問題」で片づけず、冷静な対策を

 筆者は、このようないくつかの動向が絡み合い、サービス職へのカスハラが発生しやすい素地を構成していると考えている。表面化した事象だけをとらえれば、カスハラのような悪質な高齢者の行動は確かに多く見られる。しかし、それを「老害たる高齢者のせい」という他人事にするのはあまりにも短絡的なのだ。

 高齢化の付帯現象だと考えれば、今後もカスハラは増える一方になるはずだが、上のような事象を含み合わせれば、そう単純にことは進まない。さらに、昨今の報道や法規制によって市民のカスハラへの意識が向上すれば、ここから減少トレンドに転じる可能性も十分にある。監視カメラやセルフ・レジのような予防的施策も広がっている最中だ。

 筆者は、こうした状況をトータルに見て、今、この国のカスハラ問題は大きな分水嶺にあると考えている。

 その一方で、今この瞬間にも、心無いカスハラによって、サービス職の働き手は人知れず職を辞していっている。我々消費者は、「自分が正しい」などと思いこみ、無自覚にカスハラのようなクレームを入れてしまっていないか、わが身を振り返ることも必要だ。そして、これ以上の不毛な人手不足を食い止めるためにも、各組織が実施できる具体的対策についても引き続き議論を深めていきたい。