前門のクレード1b、後門のクレード2

 エムポックスはアフリカにとどまってきたが、アフリカ外でも3カ国で確認されるようになり、決して楽観視できる状況にはない。

 世界各国の状況を見ると、強毒型1bの流入を警戒すべきフェーズに入ったことになるが、実は既に国内でも従来型クレード2が大きな問題となっている。

 もともとアフリカで蔓延していたエムポックスは、ナイジェリアなどの西アフリカで広がっていたクレード2と、コンゴ民主共和国を中心に広がっていたクレード1があった。

 クレード1は感染しやすいとされたが、最近までコンゴ民主共和国よりも外には広がらず、22年に世界に拡大したのはクレード2だった。前回、WHOが緊急事態宣言を出したのはこのためだ。

 23年5月までにクレード2の世界での感染拡大は落ち着き、緊急事態宣言を完了するに至った。ただ、クレード2の感染者が世界的に確認され続けている。

 直近5カ月のデータからアフリカ以外に多数のエムポックス感染者が確認された上位3カ国と確認された感染者数を紹介しよう。

24年8月、オーストラリアで245例、スペインで136例、米国で113例。
24年7月、米国で241例、ブラジルで106例、オーストラリアで101例。
24年6月、米国で220例、オーストラリアで64例、中国で58例。
24年5月、米国で218例、中国で57例、ブラジルで55例。
24年4月、米国で339例、ブラジルで91例、中国で42例。

 最近、東南アジアでエムポックスのクレード2が確認されたと報じられることもあり、日本でも2024年に東京都で12例、神奈川県で2例、京都府で1例、計15例のエムポックスが報告されたが、欧米、オーストラリア、中国、ブラジルと比べると少数である。

 既に多数のエムポックス感染者が継続的に発生し、それ自体が問題になっている中で、新たに強毒型クレード1bの問題が加わったことで、状況がさらに悪化している。

 前門に控える強毒型クレード1bが虎ならば、後門には従来型クレード2という狼が潜んでいる。