金鉱山と危険地域と性産業

 ここからは前回の記事で書いた通り、従来は動物から人への感染や家庭内感染が主だったが、現在は売買春を通じた異性愛者間で性感染症としても広がっている。

エムポックス急拡大の背景に「強毒型1b」と「売買春」、ゲイからヘテロに感染が広がり始めた意味(JBpress)

 コンゴ民主共和国東部の北キヴ州と南キヴ州は金鉱山があり、ここで金の採掘が行われているとされる。詳細は分からないが、金鉱山があるということを考えれば、経済活動が活発な地域なのだろう。

 そのような利権が絡む地域であるからか、反政府武装勢力が活動するなど、危険度が高い地域とみなされている。外務省によれば、北キヴ州と南キヴ州の両方で危険度がレベル4とされ、退避勧告が出されている。

 研究によれば、同地域の集団感染状況を調査した結果、感染者の約半数が性産業に従事する女性で、感染者の92%が異性愛者、61%が過去6カ月以内に複数の性的パートナーと接触していたとの研究結果が報告された。

 治安の悪い場所で、しかも性産業が成立し、エムポックスの感染拡大が起きている──。すなわち、エムポックスの性感染症化により感染拡大のペースが広がり、エムポックスの感染者急増に影響していると見るのが自然だろう。国境を越えて急速に広がっているのも、性感染症として広がっていると考えると、状況を理解しやすい。

 米国疾病対策センター(CDC)は、クレード1が流行する地域への渡航者に、性的接触が予想される場合にエムポックスのワクチン2回接種を推奨している。

 特にクレード1bの感染が成人間の親密な接触や性的接触と関連していることが多いと指摘。旅行者の約3分の1が新しいパートナーとの性的関係を持つことが予想されると報告している。要するに、多くの旅行者が売買春を経験していることを示唆しているのだ。