高市陣営が不公平だと批判されている理由

 高市陣営が問題視された背景には、高市早苗さんが党員向け封書を送付するにあたり、まだ総裁選出馬が確定していなかった7月に原文を書き、8月の頭に業者に依頼して、8月末には発送の手続きが済みましたと連絡されている、という説明にもあります。

 というのも、8月21日に自民党選管から逢沢一郎さんの名前で出された書面で、「自民党が変わる」「自民党を変える」決意に相応しい選挙とするために「今回の総裁選に関係する告示前の活動(いわゆる事前活動)についても、極力、費用をかけないよう努めるべき」と通達しています。

 事実上、党員さんに対する個別の封書送付についてはカネのかかる宣伝手法だから控えてね、という意味合いのものです。

8月21日に自民党選管から逢沢一郎さんの名前で出された書面。「自民党が変わる」「自民党を変える」決意に相応しい選挙とするために「今回の総裁選に関係する告示前の活動(いわゆる事前活動)についても、極力、費用をかけないよう努めるべき」と通達している8月21日に自民党選管から逢沢一郎さんの名前で出された書面。「自民党が変わる」「自民党を変える」決意に相応しい選挙とするために「今回の総裁選に関係する告示前の活動(いわゆる事前活動)についても、極力、費用をかけないよう努めるべき」と通達している
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 高市陣営が選管の方針を破ったと言われてしまう背景には、高市陣営以外にも封書を党員さんに送る手配を進めていたものの、選管の上記方針が出たので発送を取りやめた陣営が複数あります。そこへ、高市早苗さんだけ封書が送られると、受け取った党員さんは「うちのセンセイは高市早苗さん推しなんだな」と誤認して投票しかねず、実際投票してしまった党員さんが複数出ているであろうことは他陣営からも指摘されています。それゆえに、さすがに不公平なんじゃないの、と捉えられている面があるのです。

 高市早苗さんの地元秘書が会見で認めた封書発送の数は約35万部。後日、自民党も第三者委員会でも立てるかもしれませんが、仮にその数字が正しいとするならば郵送代も含めて3000万円以上の費用が掛かるとみられます。

 ただ、告示前の名簿閲覧期間に間に合わなかったこともあり、高市陣営は前回総裁選に出馬した2021年時点で取得した名簿を宛名にしていました。

 さらに、党員さん宛に高市早苗さんを応援するお電話が多数着電。ちなみに、ワイのところにも来ました……。どういうことなの。頑張って秘書さんたちが党員さんに電話をかけ続けているということなんでしょうか、末端は苦労させられますね。

 本来であれば、総裁選が終わった後にでも時系列や証憑類を並べた第三者委員会的なものを組む必要があるのでしょうが、これが露骨な「高市つぶし」になってしまうと、党員さんや自民党支持者も大変揺れることになります。

 確かに事実関係だけ見れば不公平とも感じられるけど、だからといって処分するぞとなると、俺たちの岸田文雄さんの意志を受け継ぎ、これから出直そうという党の結束がバラバラになりかねません。非常にデリケートな判断を迫られているというのが実際ではないでしょうか。

 かといって、中途半端な状態で宙ぶらりんにしても問題は解決せず、ずっとくすぶり続けます。仮に今回総裁に高市さんが就任しても「あれは不公正な選挙だった」とグズグズといつまでもイジられることになりますし、高市さんが落選したら高市さん支持者は「高市さんは岸田文雄さんや選管につぶされた」と憤ることになります。

 党としても、組織の維持・結束を守るためになあなあで済ませるのか、党の総裁選という神聖な行為を潜脱した高市さんへの厳正な処分をすべきという話になるのか、まだちょっとよく分からない面があります。