トランプとハリス、対極的な経済政策

 これに対して、アメリカの場合、民主党と共和党の政策は対極的なものが多い。したがって、大統領選の結果は、世界全体に大きな影響を及ぼす。

 経済財政政策についてみてみると、ハリス民主党が「大きな政府」を目指すのに対して、トランプ共和党は「小さな政府」を指向する。格差については、ハリスが分配によって公平さを実現しようとする。一方、トランプは富める者をますます豊かにすることによって、その恩恵が貧困層にも及ぶというトリクルダウン理論を信じている。

民主党の大統領候補カマラ・ハリス副大統領(写真:AP/アフロ)
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 具体的には、トランプは、米国内で製品を生産する企業に対し、法人税を15%に引き下げる(現行21%)という。これで0.6兆ドルの歳入減となる。その他に、減税恒久化で3.4兆ドル、年金給付への課税撤廃で1.2兆ドル、企業への税制優遇で0.6兆ドル、合計5.8兆ドルの歳入減が生じる。

 そこで、財政赤字対策が問題になるが、財源をどこに求めるのであろうか。トランプは、大幅減税で経済が活性化し、生活が豊かになり、消費も増えるので財政赤字はさほど増えないと豪語する。しかし、貧富の格差は拡大する。

 後述するように、トランプは関税の引き上げを挙げているし、また財政支出の無駄を削減するという。しかし、予算案には議会の承認が必要であり、民主党の反対が予想される。

 ハリスのほうは、法人税28%へ引き上げる、富裕層(年間100万ドル以上の収入)のキャピタルゲイン課税を28%に引き上げるなど、トランプとは逆方向の政策を提案している。その結果、企業の活力が失われ、また、富裕層の消費が減らして、財政赤字は増大すると見積もられる。これは、格差の解消を目指す「富の再分配」政策である。ハリスは、失われた中間層を取り戻すと言っている。