「投資の神様」との異名を持つ米著名投資家、ウォーレン・バフェット氏は株式相場の過熱に警鐘を鳴らしてきた。2019年撮影(写真;ロイター=共同)

8月5日に日経平均株価が4451円安という過去最大の下落幅を記録し、上昇相場に慣れきっていた市場に冷や水を浴びせました。その後、落ち着きを取り戻したようにも見えますが、果たして再び上昇軌道に戻れるのでしょうか。

(市岡 繁男:相場研究家)

日銀副総裁の発言で混乱はひとまず収拾したが…

 円相場が1ドル=161.99円の直近安値をつけたのは7月3日、日経平均が4万2426円の取引時間中の最高値をつけたのは7月11日のことでした。

 その後、日銀が7月末に政策金利を0.25%程度に引き上げる利上げを行ったことで世界は一変し、円相場は一時1ドル=141.66円(直近ピーク比12.5%高)、株価は一時3万1156円(取引時間中最高値比で26.5%安)まで下落しました。

 この混乱は金利が上がったことよりも、円高が進んだことによって引き起こされたものです。

 円相場の時間足チャートをみると、1ドル=152円を割ったあたりから円高が加速しています。

 一部の海外投資家は1ドル=152円を損切りラインにしていたのでしょう。

 ヘッジファンドは通常、10~100倍ものレバレッジを効かせた投資を行うため、為替が想定から約5%反対方向に動けば、含み損はその10倍以上になります。

 こうなると為替スワップや先物取引のブローカーから追証が求められ、為替(ドル円)も株価も損切りを余儀なくされたのでしょう。夏休みで市場参加者が少なかったことも相場の変動を大きくした要因の一つと考えられます。

 今回の混乱は、日銀副総裁が「市場が不安定な時はこれ以上の利上げを控える」との趣旨の発言したことで、ひとまず収拾がつきました。

 しかし、利上げのような金融政策は、物価の安定目標を達成するために必要だと日銀が考えて決めることです。そんなことが世界の金融市場が脆弱であるとの理由で行えないのはいかがななものでしょうか。