7月31日、日銀植田総裁は金融政策決定会合後の記者会で追加利上げの判断について説明した(写真:ロイター/アフロ)

金融・経済環境がめまぐるしい動きを見せるなか、日本銀行の姿勢に大きな注目が集まっています。日銀はこの2024年3月、ゼロ金利政策を解除して17年ぶりに利上げを実施。そして同7月31日には、年0%〜0.1%程度だった政策金利を年0.25%程度とする追加利上げに踏み切り、「金利のある世界」への回帰を果たしました。アベノミクス下で続いた「異次元の金融緩和」からようやく脱したのです。では、日銀はどんなロジックで利上げを実施したのでしょうか。今後の金融政策はどうなるのでしょうか。株式市場への影響なども交えながら、やさしく解説します。

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「金利ある世界」に回帰

 日銀の植田和男総裁は7月31日、追加の利上げ決定後の記者会見で利上げの理由について、「経済や物価のデータがオントラック(想定通り)だったことに加え、足元の円安が物価に上振れリスクを発生させている」と語りました。経済指標を分析すると、ここで利上げしても景気にブレーキはかからないと強調。むしろ、利上げしないことによって円安がさらに進み、市民生活にマイナスとなる物価上昇を招きかねないと判断した、と説明しました。

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 また、この日の金融政策決定会合では、利上げだけでなく、日銀による長期国債の購入額についても2025年度末までに現在の半分に当たる月3兆円程度にまで減額する方針も示しました。

図:フロントラインプレス作成
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 日銀は2013年、植田氏の前任だった黒田東彦氏が総裁に就任すると同時に「黒田バズーカ」との異名を持つ大規模な金融緩和に乗り出しました。安倍晋三政権と一体となって、景気浮揚へのかじ取りを始めたのです。

 その象徴がマイナス金利でした。これら異次元の金融緩和は円安・株高をもたらし、輸出企業を中心に日本経済の上昇基調を演出してきましたが、この間、企業は潤沢な利益を労働者や投資に十分回さず、賃金は長らく思うように伸びませんでした。そうしたなか、過度の円安が進み、物価上昇が懸念される事態に至っていたのです。

 植田日銀による7月31日の利上げは、こうしたマイナス金利・ゼロ金利の路線に終止符を打ち、経済活動を正常な姿に戻すことにありました。実際、植田総裁の会見発言には、それがにじみ出ています。会見発言のポイントを整理しましょう。