内田副総裁、市場が不安定な状況で「利上げはない」

 日銀の内田真一副総裁は8月7日午前、北海道函館市で行われた講演で、「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要があると考えている。金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」と明言しました。利上げ時の会見で植田総裁が示唆した「さらなる利上げ」の方向性を打ち消したとも思える内容です。内田副総裁は講演後の記者会見で次のように言葉を重ねました。

追加利上げに慎重な姿勢を示した日銀の内田副総裁(写真:共同通信社)

「市場の変動が急激だったこと自体は事実だ。『当面』がいつまでかということはともかく、これまでよりも慎重に考えるべき要素が生じていると思っている。(円高については)日銀の政策変更に伴って円安の修正が進んだ。このことが、日本の株価がほかの国に比べてより大きく下落し、変動した要因のひとつであると思う」

 植田総裁との間で見解の相違が生じているかどうかについては、内田副総裁は「(利上げ決定時の)総裁会見より後の段階で市場の急激な変動が起きているわけであって、総裁と私の間に考えの違いがあるということではない。状況が変化したということだ」と説明し、“総裁・副総裁の対立”という見方を一蹴しました。

 それでも、「段階的な利上げを探る方針を本当に日銀は堅持できるのか」という市場の懐疑的な見方は消えていません。9月の自民党総裁選、11月の米大統領選など市場の動向を左右する政治日程も間断なく続きます。「次の利上げは早くて年明けではないか」といった観測が飛び交うなか、次の金融政策決定会合は9月19、20日に開かれます。

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