日銀総裁の異例の“謝罪”
中央銀行は本来、その国の政府から独立し、物価の安定を主目的として金融政策を行う存在です。中央銀行が「物価の番人」と呼ばれるのも、そのためです。
ところが、物価上昇をうまくコントロールできていないと感じたのか、植田総裁は会見で「データを見ると、消費者物価総合ないし、除く生鮮が2%を超えている期間も既に2年をかなり大幅に超えているということで、長期化している高いインフレ率が人々に負担を強いていることは、申し訳なく思っている」と語ったのです。
国民に対する日銀総裁のこうした“謝罪”は異例といっていいでしょう。あるいは植田総裁の頭には、自身が総裁に就任する2023年4月以前の日銀はアベノミクスを掲げる政権と一心同体になり過ぎて金融政策の幅を自ら狭くしていた、との思いがよぎったのかもしれません。
日本経済を「金利のある世界」に戻した植田日銀は、その直後、手荒い局面に遭遇しました。利上げ後に起きた東京株式市場の大暴落です。
日経平均株価の終値は2日後の8月2日、前日終値比2216円安の3万5909 円。週末を挟んだ8月5日には同4451円安の3万1458円まで落ち込みました。下落幅は前者が史上3位、後者が史上1位という凄まじい落ち込みでした。
株価の暴落には米国市場の落ち込みが大きく影響したと見られていますが、同時に急激な円高も進み、市場が動揺したことで、日銀も傍観しているわけにはいかなくなりました。