日銀が追加利上げを判断した背景は?

【利上げを判断した経済環境】

◎利上げに踏み切った理由は、物価上昇リスクを考慮したため。だいぶ前はゼロに近かったが、現在ははっきりと2%に向かって上昇している。物価上昇率が2%を上回っていくリスクが存在する以上、少しずつでも早めに利上げした方が「(金融政策の幅が広くなり)後が楽になる」と判断した。

◎個人消費はすごく強いわけではないが、消費に関する日銀の指数を検討し、消費は底堅いと判断した。実質金利が低い中で少しだけ利上げしたのであり、景気に大きなマイナスの影響を与えるものではない。

日銀の追加利上げにより円相場と株価は大きく動いた(写真:アフロ)

【利上げなどがもたらす影響】

◎賃金や物価が上昇しているなかでの利上げであり、これによって経済が減速するとは見ていない。政策金利を年0.25%に引き上げても、依然として非常に低い水準であり、実質金利は深いマイナスだ。景気に強いブレーキがかかることはない。利上げ後も実質金利は大幅なマイナスが続くため、緩和的な金融環境は維持される。

◎国債買い入れの減額計画を遂行しても、日銀の国債保有残高は2年先で7〜8%程度減るだけ。そうなった段階でも国債保有は「長期的に望ましい水準」よりも高い水準にある。残高の減少による金利上昇圧力は大きなものではない。

【今後の金融政策】

◎今後のデータ次第だが、経済・物価が日銀の見通し通り、あるいは見通し対比で上ぶれする場合には、さらなる利上げもあり得る。(どの辺りで利上げをストップするのかは)大きな課題として残っている。今年に入って2度目の利上げとなるので、その影響を見つつ(今後の利上げについては)「歩きながら考える」。

 総じて言えば、物価と賃金の好循環が生じるよう、段階的に金利を上げていくという戦略だったと言えるでしょう。国民の安定した暮らしを第一に考えているという姿勢は、この日の会見でも植田総裁の言葉の端々から感じられました。