生成AIへの出遅れだけではない深刻さ

 インテルがこうした苦境に追い込まれたのは、生成AI分野に乗り遅れただけではありません。それ以外の分野でもライバル企業の台頭で足元を脅かされ、中国による政策も影を落としているのです。

 半導体の製造は現在、自社工場による生産ではなく、ファウンドリー(受託生産)が基本です。この部門でもインテルは営業赤字を出していますが、大きな理由が外国企業の伸長です。

 その象徴は、熊本県にも工場を新設したことで知られる台湾積体電路製造(TSMC)でしょう。同社は自社工場を持たないエヌビディアから製造を受託し、生成AI用半導体の製造では独走態勢を築きつつあります。TSMCは2024年に過去最高の収益を出すと見込まれています。韓国のサムスン電子も、ファウンドリー事業で大幅な利益を出しています。

 1990年から2010年代にかけ、世界を席巻したインテルはこの間、自社工場での半導体製造にこだわり、同業他社に製造を委託する水平分業には傾注しませんでした。それが高コスト体質を生み出し、大規模な合理化に追い込まれる結果につながったのです。

 一方、中国の対応も見逃せません。

 中国の財務部と工業情報化部は2023年末、物品調達指針を改訂。このなかで半導体製品については「安全かつ信頼できる製品」に限定するよう通達し、18種類の製品をリスト化しました。いずれも中国製であり、インテルなど米国製品を排除していく狙いがあるとされています。インテルにとって、中国は売上の3割を占める重要な市場です。その中国で“インテル締め出し”が本格的に実行されれば、打撃は避けられません。