インテル「一人負け」の状況

 インテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は4〜6月期決算と合理化型計画の発表に際し、「AI(人工知能)という強力な追い風の恩恵をまだ十分に受けていない」と説明しました。技術革新の軸足はここ数年、情報通信の分野からAIへと急速に移り変わっています。インテルはその“AI対応”に遅れを取り、業績を悪化させているというのです。

 インテルの部門別業績の数字に苦境は現れています。

 主力のパソコン向けCPUなどのクライアント・コンピューティング部門は前年同期比9%増の74億1000万ドルだったものの、力を入れてきたファウンドリー部門(半導体の受託製造)の営業損益は28億3000万ドルの赤字でした。この部門の営業赤字は2期連続です。

 次世代の主力となるはずのデータセンター向け生成AI事業部門も厳しいものでした。この部門の売上高は3%減の30億4500万ドルにとどまっています。

エヌビディアは生成AI向け半導体で圧倒的な強さを見せる(写真:QubixStudio/Shutterstock)

 生成AIの技術開発や運用には、短時間で大量のデータを学習・処理できるデータセンター向け画像処理装置(GPU)が欠かせません。しかし、この分野では米半導体メーカーのエヌビディアが市場の9割を掌握し、圧倒的な存在になりました。

 また、インテルの当面のライバルだった米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)は2024年4〜6月期、この分野でインテルの2.2倍の売り上げを叩き出しました。まさに、インテルの一人負けです。

 つまりインテルは、CPUや半導体の受託製造といった主力部門で利益を生み出せず、成長が見込まれる生成AI部門は伸び悩みが鮮明になってきたわけです。