しかし、この時点での交代は、現実的にもルール上も難しい。あるとすれば、バイデン大統領が自主的に辞退することだが、本人にその気はないようであり、討論会の翌日、バイデン氏はこう語った。

≪自分は若くないことは分かっている。以前ほど楽に歩けない、以前ほど流暢に話せない、以前ほどうまく討論できない。・・・しかし、この仕事をやり遂げられると心の底から信じていなければ、再出馬はしない≫

 バイデン氏の頑固さには定評がある。トランプ氏を破って民主主義を救えるのは自分しかいないと思い定めているかのようだ。そんな彼の堅い意志を変えられるとすれば、バイデン夫人のジルさんしかいないとも言われるが、ジルさんは熱烈なバイデン続投支持者であると見られてきた。

 ここに至って、『ニューヨークタイムズ』は、バイデン大統領に撤退を促す社説を掲載して、こう明言した。

≪今、バイデン大統領にできる最大の公的奉仕は、再選に向けての立候補をしないと発表することである≫

 こうした声を受けて、バイデン氏は態度を変えるであろうか。夫人のジルさんは最愛の夫に引退を勧めるだろうか。

 いずれにせよ、バイデン氏が立候補を辞退しない限り、討論会が印象付けたトランプ勝利の構図は変わらないまま、11月に流れ込む可能性が高い。そうなれば、トランプ氏がホワイトハウスの主に返り咲き、米国や世界の混迷がさらに深まる公算が高まる。

バイデンに代わる新たな候補は生まれるか?

 6月29日付英『エコノミスト』誌は、「今、バイデン氏は自らに代わる候補者に道を譲るべきだ」と題する記事を掲載した。

 バイデン氏に代わる候補として、トランプ氏を退ける、若く力強い政治家がいるだろうか。欧米主要メディアに名前が挙がるのは、次のような顔ぶれである。