討論会後に大統領周辺からは、バイデン氏が少し前に風邪を引いていたとの情報が流れた。バイデン氏の声がしわがれたことへの釈明であろうが、それは却って低調なパフォーマンスを認める格好となった。

 第三に、最初のテーマとなった経済や移民の問題について答える中で、バイデン氏が言い淀んでしまう場面があり、発言が尻切れトンボに終わってしまった。この失敗をトランプ氏は見逃さず、こう指摘して、視聴者の不安を募らせた。

≪私には彼が最後のセンテンスで何を言ったのか分からなかった。彼自身も何を言ったか分からなかったのだと思う≫

 トランプ氏の指摘が正しかったように思えるシーンであり、今後、このシーンは認知機能に不安があるとしてトランプ氏と共和党に利用されるかもしれない。筆者の心配が的中するかのように、その後、この場面は「サウンドバイト」的にメディアやSNSで繰り返し流された。

ジル夫人とともに討論会場を後にするバイデン氏(写真:ロイター/アフロ)

ゴルフの「実力」で主導権を握ったトランプ

 一方、トランプ氏は、認知能力テストを2回受けたと主張し、ゴルフのハンディにまで言及して自らの健康状態がすこぶるよいことをアピールした。ゴルフの試合で2回優勝した実績も披歴して、頭脳明晰で、球を遠くまで飛ばせる力がなければ達成できない記録だと自慢した。

 その時のやり取りを取り上げてみよう。