- ハマスによる突然のイスラエル攻撃を誰も予想できなかったように、国際情勢の先読みは非常に難しい。
- 毎年恒例の10大リスク予想で知られ、ユーラシア・グループを率いるイアン・ブレマー氏ですら予想外の展開になるほどだ。
- 「先を読む」ことは困難でも、「時代の流れ」を捉える努力は大事だ。トランプ氏の大統領再選を視野に入れつつ、国家も企業もしたたかに生き抜かねばならない。(JBpress)
毎年恒例のイアン・ブレマー氏の10大リスク予想では…
国際政治の先を読むことは、実に難しい。1年先、ましてや数年先に何が起きると見通すことなど、ほぼ不可能だと言ってよいだろう。武漢から世界に広がった新型コロナの発生からハマスによるイスラエルへのテロ攻撃まで、事前に予想できた人などいなかったであろう。
「先を読む」ことにおいて世界的評価を勝ち得ている米国調査会社ユーラシア・グループでさえ、予想がすべて的中するわけではない。
同社を率いるイアン・ブレマー氏は、2023年のレポート『トップリスク2023(10大リスク)』において、こう書いている。
≪現在の世界がどうなっているのか、本当にそうなのか、正しく理解すれば、将来がどうなるのかをどんな占師の水晶玉よりも明確にとらえることができる。「トップリスク」は多くの意味で、「不可能を可能にする技」なのだ。…今年も「トップリスク」をホームページに掲載したままにしておく。そうすれば噓はつけない。12月になったら結果がどうだったかを確認してほしい。≫
ブレマー氏の呼びかけに応じて、2023年の予想(『トップリスク2023』)の結果がどうだったのかを確認してみよう。
全体として、大きな時代の流れを俯瞰しながら、様々なリスクについて分かりやすく分析しており、私を含め、多くの人にとって、大いに参考になったであろう。その上で、細かく見ていくと、予想とは違う展開となったケースもある。筆者が気付いた点をいくつか挙げてみよう。
誰も予想できなかったハマス・イスラエル戦争
「10大リスク」の中で直接言及されていないのが、10月7日に世界を震撼させたイスラム組織ハマスによる残虐なイスラエル人大量殺戮テロであり、それに報復するイスラエル軍のガザ攻撃によるパレスチナ民間人の甚大な犠牲である。
この戦争について、ブレマー氏は、『日経ビジネス』のインタビュー(記事は2024年1月3日付)で、こう述べている。