2月15日、ニジニ・タギル市にある軍需企業ウラルヴァゴンザヴォートを訪れ、作業員らと言葉を交わしたプーチン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

1960年代後半に封印された“禁じ手”

[ロンドン発]ウクライナ戦争で米実業家イーロン・マスク氏のスペースX社の衛星インターネット「スターリンク」がなかったらウクライナは“情報ブラックアウト”に陥っていたはずだ。現在、軌道上にある人工衛星は8377基で、内訳は米国2926基、中国493基、英国450基、ロシア167基、日本90基(リトアニアの宇宙スタートアップ企業・コングスバーグ・ナノアビオニクス社の集計)。

 ロシアは軍事利用できる西側商業衛星の画像や通信、ナビゲーション、測位サービスへのアクセスを制限されている。軌道上にある衛星を破壊する技術力を持つロシアのウラジーミル・プーチン大統領は情報格差を少しでも解消するため、スターリンクの人工衛星に電子的に干渉しようと試みている。

 だがそれ以上に、人工衛星自体を大量に破壊することができる“禁じ手”がある。

 核兵器を宇宙空間や高高度で爆発させることで強力なEMP(電磁パルス)を発生させ、西側衛星の電子回路を焼き切って無力化できるのだ。これは軍事衛星だけでなく通信・放送衛星、測位衛星、観測衛星に影響を及ぼし、軍民のインフラに重大な混乱を引き起こす恐れがある。こうした宇宙空間での核兵器使用は冷戦時代の1960年代後半に封印されたが、プーチンはその使用を検討しているのだという。