ロシア大統領選はプーチン氏が圧勝する見通し(写真:代表撮影/AP/アフロ)

3月17日のロシア大統領選までおよそ1カ月となりました。5選を目指す現職のプーチン氏に対し、有力な対立候補は見当たらず、プーチン氏の圧勝が早くも予想されています。そうしたなか、2月16日には、ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が収監先の刑務所で死亡したとの発表もありました。2年前に始まったロシアのウクライナ侵攻に対し、反対の声はロシア国内でも高まっていますが、民意がどのような形で示されるのか、世界各国も関心を持っています。日本にとっては隣国の一つ。その大統領選について、仕組みと見どころをやさしく解説します。

西村卓也:フリーランス記者、フロントラインプレス

反体制候補出馬できず

 ロシア大統領の任期は6年です。前回大統領選は6年前の2018年3月に行われ、プーチン氏が勝利しました。今回はプーチン氏の任期満了に伴う選挙となります。

 投票は3月15日から17日まで行われる予定です。ロシア連邦全体を1つの選挙区とみなし、全国各地及び在外有権者用の外国に設けられた投票所で一斉に投票が行われる予定です。ロシアのタス通信の報道によると、今年1月1日現在の有権者数(18歳以上)は1億1230万人。第1回投票で50%以上の投票率を占める候補がいなければ、上位2候補による決選投票が行われます。また、ロシアが併合したと主張するウクライナの地域でも投票を行う構えです。勝者は5月に就任します。

 立候補する資格には細かな規定があります。被選挙権は35歳以上で、ロシアに25年以上居住していることが条件。過去に外国の国籍を取得したり、外国で居住資格を得たりしていないことが求められます。過去に犯罪を犯して自由をはく奪された経験がないことも条件の1つです。

 そのほかに、大きな特徴があります。候補者になるには署名を集める必要があるのです。政党の推薦を受ける候補は10万人、無所属は30万人の署名を提出しなければなりません。プーチン氏は昨年12月に立候補を表明し、中央選管に無所属候補として30万人分の署名を提出し、正式な候補として登録されました。このほかに3人の候補が登録を済ませていますが、いずれもプーチン政権を支持する「体制内野党」の候補とされています。

反プーチンのナデジディン氏は出馬を認められず(写真:ロイター/アフロ)

 一方、改革派政党「市民イニシアチブ」は、ウクライナ戦争反対を訴えて反プーチンの姿勢を鮮明にする元下院議員のナデジディン氏の擁立を試みました。署名も10万5000人分を集めて、立候補を届け出たのです。ところが、中央選挙管理委員会は署名のうち約9000人分を無効と判断し、必要な数に達していないとして候補者登録を認めませんでした。また、リベラル系ジャーナリストのドゥンツォワ氏も立候補を模索しましたが、中央選管は書類の不備を理由に立候補を受理しませんでした。

 候補者登録は2月10日で締め切られており、結局、プーチン氏ら4人による選挙となる構図が固まっています。

ロシアの反体制指導者ナワリヌイ氏が死亡した=2012年2月資料写真(写真:REX/アフロ)

 また、プーチン政権の腐敗を追及し、国民の人気も高かった反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が、収監中の刑務所で死亡したとのニュースも2月16日に飛び込んできました。

 ナワリヌイ氏は前回2018年の大統領選に立候補しようとしましたが、出馬を認められなかった経緯があります。その後、ロシア国内で猛毒の襲撃を受け、ドイツで静養。帰国と同時に過去に受けた有罪判決の執行猶予が取り消され、最近、極北の刑務所に送られていました。