(高世 仁:ジャーナリスト)
職を失い、フリーマーケットで生活費を
ロシアがウクライナ侵攻を開始してまもなく2年がたつ。今もロシア軍の攻撃が続くなか、ウクライナの市民は戦争にどう向き合っているのだろうか。
靴、衣類、懐中電灯、玩具、絵本、ぬいぐるみ、各種の道具類…。いったい誰がこんな物を買うのか、首をかしげたくなるものまで並んでいる。
ここはウクライナ東部ドネツク州クラマトルスク市のフリーマーケットだ。集合住宅前の歩道で週に6日開かれている。少しでも生活の足しにと、自宅や知り合いの家から売れそうな物を見つくろって路上に陳列している。
店を出しているのは年金暮らしの高齢者が多いが、なかには戦争で失業した人もいた。コートや上着、皿やコップなどの食器を並べていたナジェルナさんは、幼稚園の補助教員の職を失ったという。
「ほとんどの幼稚園児が避難のため町を出たので、仕事がなくなりました。夫も会社に解雇されてしまい、生活費に困ってここに来ていますが、まったく売れない日もあります」(ナジェルナさん)