1月15日、ベルリンのブランデンブルク門近くで、自動車税補助金削減に抗議するドイツの農民たち1月15日、ベルリンのブランデンブルク門近くで、自動車税補助金削減に抗議するドイツの農民たち(写真:ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 ヨーロッパで農民が反乱を起こしている。ドイツでもフランスでも、農民がトラクターに乗って高速道路などを塞ぎ、交通を麻痺させている。政府に対する抗議の意思表明である。ヨーロッパで今、何が起こっているのか。

ドイツではショルツ政権への批判が高まっている

 今のショルツ政権は、SPD(社会民主党)、緑の党、FDP(自由民主党)の連立政権であるが、とにかく人気がない。それは、物価が上がり、ドイツ人の生活が苦しくなっているからである。

 GDPの実質成長率は2022年後半から低迷しており、G7の中で唯一マイナス成長である。これまでは、安価なロシア産の天然ガスを輸入して経済を成長させてきたが、ウクライナ戦争の勃発で、それが不可能になった。

 さらに、反原発の「緑の党」と連立しているショルツ政権は、2023年4月に全ての原子力発電所を閉鎖した。再生可能エネルギーを主軸とするというが、供給の不安定性、高価格などの問題があり、それが電気料金の大幅な値上げにつながっている。今の状況での原発全廃に対しては、国民の過半数が反対しており、それも政権への不満を高めている。

 エネルギー価格の高騰は、個人消費の低迷を招いている。ドイツは、GDPで日本を抜いて、世界第3位に躍り出たというが、それはインフレとドル換算によるものであり、ドイツ経済の実態には厳しいものがある。