(国際ジャーナリスト・木村正人)
前線に広がる砲弾不足
[ロンドン発]「この冬、ウクライナ軍は目に見えて“ガス欠状態”に陥っている。最近の報道ではウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムート郊外に配備されたM109 155mm自走榴弾砲A6(パラディン)砲の弾薬は発煙弾のみだ。私たちが最後に現地に赴いた昨年11月当時、砲弾不足は前線全体に広がっていたが、状況は悪化の一途をたどっている」――。
米国の戦略・国防・外交に関する分析と討論のオンライン・プラットフォーム「ウォー・オン・ザ・ロックス」に、ウクライナ戦争に詳しい米超党派シンクタンク「カーネギー国際平和基金」のマイケル・コフマン、ダラ・マシコット両上級研究員、外交政策研究所のロブ・リー上級研究員という気鋭の3人が共同で寄稿(1月26日付)している。
満を持して昨年6月に始まったウクライナ軍の反攻は完全に不発に終わり、長期的に見た場合、現状維持も難しい状況だ。国内軍需産業を動員し、戦線の一部で主導権を奪い返したロシアは今年、人的にも、物的にも優位に立つ。一方、ウクライナは西側からの弾薬供給が著しく減少したため、戦線全体が極度の砲弾不足に陥っている。
今年11月の米大統領選でドナルド・トランプ前大統領が返り咲き、西側の支援が大幅に減った場合、ウクライナは疲弊し、弱者の立場でウラジーミル・プーチン露大統領との「停戦交渉」に応じざるを得なくなる。
しかしロシア軍も攻撃には敵の3倍超の兵力が必要という「攻撃3倍の法則」に阻まれ突破口を開けず、東部ドンバスも掌握できない膠着状態が続く。