大統領時代「台湾に思い入れはない」と言い放っていたトランプ氏
世界中が注目した2024年1月13日の台湾総統選挙は、親米・反中を貫く政権与党、民進党の頼清徳副総統に軍配が上がった。(5月20日に新総統に正式就任)
頼氏は「台湾と中国は別だ」を掲げる蔡英文総統の右腕で、現路線の踏襲は確実と見られている。しかも「台湾独立」を強調した過去もあることから、大陸と台湾の「祖国統一」に執着する中国国家主席の習近平氏には“目の敵”に映るだろう。
中台関係のさらなる悪化も予想されるが、習氏にとっていま最大の心配事は、今年11月の米大統領選での「トランプ氏再選」ではないだろうか。
「頼、トランプ両氏の“化学反応”で、台湾の核武装と『核ドミノ』が発生する、とのシナリオが現実となって、中国の安全保障を脅かしかねないと考えているのでは」
と、米中関係に詳しいある専門家は推測する。
台湾の核武装とは、台湾が秘密裏に続けてきた核兵器開発を再開すること。「核ドミノ」は、台湾の核武装を引き金に、韓国や日本など周辺国が“ドミノ倒し”のように次々と核保有に走るという連鎖反応のことである。
まずは、いまネットでも急上昇中のキーワード「もしトラ(もしも、トランプ氏が米大統領に返り咲いたら)」と、台湾への影響が注目される。
「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を叫ぶトランプ氏が米大統領に復帰すれば、アメリカの外交戦略は、中国に対する猛攻へと大きく軸足を移すとの見方が強い。猛攻と言っても、軍事力の行使ではなく、巨大取引「グレート・ディール」のことだ。前出の専門家はこう説明する。
「不動産取引で財を築いたトランプ氏にとって、ディールによる金儲けは一番の関心事だろう。アメリカにとっての最大の貿易赤字国である中国と“がっぷり四つ”で駆け引きし、大きく稼ごうと考えているはずだ」
さまざまなカードを取引材料として切り、中国側に米製品の大量購入などを迫る腹積もりで、ここ一番の時に「台湾カード」を切るのでは、と欧米の一部メディアも推測する。
国際情勢に詳しいあるジャーナリストもこう推察する。
「トランプ氏は先の大統領時代、周囲に『台湾に思い入れはない』と言い放っていたのは有名な話だ。それでも当時、アメリカの安全保障上、台湾が極めて重要だと諫めるブレーンが多数いたが、いまや大半が去ってしまった。
仮に中国が台湾に武力行使、つまり台湾有事を起こしても、アメリカは直接参戦しない。見返りに中国は米製品の大量購入や、技術の第三国移転の防止、知的所有権の保護を強化し、アメリカの対中貿易赤字を劇的に減らすという“密約”が交わされているだろう」
この戦略がいわゆる「台湾放棄」だ。