大統領選に「原爆論争」持ち込んだトランプの胸の内
デサンティス撤退で勢いづくが、頭の中は「議会乱入事件」裁判でいっぱい
2024.1.24(水)
高濱 賛
フォロー
フォロー中
トルーマンも自分も免責特権で公務遂行
ニッキー・ヘイリ―元国連大使との一騎打ちとなる共和党ニューハンプシャー州予備選直前にドナルド・トランプ前大統領が“原爆”を投下した。
事実誤認や独自の「怪論」(?)を連発するトランプ氏だが、1月20日、これまでの共和党大統領指名キャンペーンでは一回も出てこない「日本」に言及、しかも米国民の間では依然としてその正当性*1がまかり通るハリー・トルーマン第33代大統領の原爆投下決定を取り上げたのだ。
(newsweek/donald-trump-evokes-hiroshima-presidential-immunity)
*1=トルーマン大統領の原爆投下を支持する米国民は2005年時点で57%、正当化する人は29%(1991年時点では63%)だった。
(pewresearch/70-years-after-hiroshima-opinions-have-shifted-on-use-of-atomic-bomb/)
バラク・オバマ第44代大統領が2016年、広島訪問した際には「日本軍の真珠湾奇襲も取り上げるべきだ。(原爆投下については)絶対に謝罪するな」と言っていたトランプ氏だが、1月20日のニューハンプシャー州遊説ではこう言い出したのだ。
(cnn/donald-trump-criticizes-barack-obama-pearl-harbor)
「トルーマン氏が原爆投下を決定したことが(無差別殺戮による戦争犯罪として)起訴されないのは、大統領としての免責特権があったからだ」
発言の内容は以下の通りだ。
「広島に原爆を投下したのは必ずしも良い行為ではなかったが、第2次大戦を終結させることになった。そうだろう。長崎(への原爆投下)もだ」
「大統領には完全な免責特権を与えなければならない」
「トルーマン大統領が広島と長崎への原爆投下を決断したのは、大統領が在任中の行為について起訴されない『免責特権』(Immunity)を持っていたからだ」
「トルーマン大統領は『免責特権』がなければ、(米国内の)対立する勢力から起訴されるので決断しなかっただろう」
トランプ氏の言い分はこうだ。
だから自分は、大統領選挙の結果を覆そうとして行われた2021年1月の議会乱入事件の時には、大統領の公務の範囲内で行動したのであって、「免責特権」を与えられてしかるべきだ。