(国際ジャーナリスト・木村正人)
「大統領府はザルジニーが政治的な発言をしていると懸念している」
[ロンドン発]ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(46)が1月29日、ロシア軍との壮絶な戦いを指揮するウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官(50)に退任を求めたが、総司令官はこれを拒否したと左派系英紙ガーディアン(30日付電子版)が報じた。ウクライナ軍の反攻が不発に終わり、2人の関係は一段と悪化している。
ウクライナの野党議員で総司令官の盟友とされるオレクシイ・ゴンチャレンコ氏はガーディアン紙に「29日、ゼレンスキーはザルジニーに退任を求めたが、総司令官はそれを拒否した。対立の原因は人格の衝突だ」と明かした。「解任は悪い考えだと個人的に思う。大統領府はザルジニーが軍事ではなく政治的な発言をしていると懸念している」
29日、ザルジニー総司令官更迭の観測がソーシャルメディア上で拡散した。これに対しウクライナ国防省は「事実ではない」と一蹴した。しかしゴンチャレンコ氏は「国内世論と西側諸国の反応を見極めた上で、ゼレンスキーはザルジニーを解任し、国防相の支持を得て後任の総司令官を指名するだろう」と軍部と文民の対立を煽る。
英誌エコノミスト(30日付電子版)も「ゼレンスキー大統領が数週間にわたる緊張状態のあと、29日にザルジニー総司令官を解任しようとしているというウワサがキーウを駆け抜けた。ウクライナで最も人気のある人物を更迭することは深刻な論争を呼び、ウクライナとロシアの戦争における極めて重要な瞬間を意味する」と指摘している。