米国は衛星を防衛する能力を持っていない
現時点で米国は衛星を防衛する能力を持っていない。ロシアが宇宙空間における探査と利用の自由、領有の禁止、宇宙平和利用の原則を定めた宇宙条約(1967年発効)を破棄するのではないかという重大な疑念が膨らむ。「ロシアが宇宙空間での核兵器の配備に近づいているようには見えないため、緊急の脅威とは考えられない」と同紙は分析している。
![2023年4月、フロリダのケープカナベラル宇宙軍基地より発射されるスペースX社のファルコン9](https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/d/9/600mw/img_d95aa585e67c2b73b4944a5735c1f1cc2454709.jpg)
宇宙空間での核兵器使用は1963年の部分的核実験禁止条約(PTBT)や宇宙条約で禁止されている。ウクライナ戦争で完全に正気を失ったプーチンなら2つの条約から離脱することも想定しておかなければならない。宇宙空間への核兵器配備を防ぐ時間は限られている。冷戦時代、すでに米ソ両大国は宇宙への核兵器配備を考えていた。
1957年、人工衛星スプートニク1号の打ち上げに成功したソ連は宇宙開発競争で米国に差をつける。翌58年、米国は月面で原子爆弾を爆発させて軍事力と科学力を誇示する「プロジェクトA119」を策定した。月面での核爆発計画は実行されることはなかったが、もし実行されていれば宇宙空間の軍事化につながった恐れがある。
一方、ソ連の計画は米国より大規模で、宇宙ベースの兵器プラットフォームの開発も含まれていた。最も有名な計画の一つは核兵器を運ぶ「部分軌道爆撃システム」(FOBS)である。FOBSは地球を周回した後、目標に到達するよう設計され、米軍の早期警戒レーダー網を回避するのが狙い。核兵器運搬目的の宇宙空間の戦略的利用を象徴する計画だった。