ウクライナの新しい総司令官オレクサンドル・シルスキー大将(右)と握手するゼレンスキー大統領(2月10日、ウクライナ大統領府のサイトより)

 2月8日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はついにヴァレリー・ザルジニー総司令官を解任し、後任にオレクサンドル・シルスキー大将を指名した。

 ウクライナ軍の上層部の交代は、米国からの兵器・弾薬供給が途切れ、ロシア軍の数的優勢による強引な攻撃が継続する厳しい状況下でなされた。

 交代は戦況に影響を及ぼすであろうし、新体制がうまく機能するためには時間がかかるであろう。

参考:「ウクライナ軍総司令官が解任されるべきではないこれだけの理由

 ウクライナでは、「小さなソ連軍では大きなソ連軍を打ち負かすことはできない」という格言がよく使われるという。

 現在の状況で言えば、「ウクライナ軍が小さなソ連軍になったのでは、大きなソ連軍であるロシア軍を打ち負かすことはできない」ということである。

 ロシアはまさに、目的達成のためには手段を選ばない超限戦を展開している。

 例えば、戦場における人的優位を確保するために囚人を累計数十万人単位で兵士として採用し、突撃兵として利用している。

 ウクライナ軍がソ連式の兵器、指揮要領、戦略・作戦・戦術を採用して小さなソ連軍になってしまっては、ロシア軍を敗北させることはできない。

 実は、2014年のロシアによるクリミア半島併合直後から、ウクライナ軍は小さなソ連軍にならないための努力を重ねてきた。

 米英などの兵器を導入し、米英式の指揮・統率、作戦・戦い方などを学んできた。

 その成果があって、ロシア・ウクライナ戦争の初期においてキーウ奪取を目指したロシア軍に大損害を与え撤退させることができたのだ。

 そして、2022年秋の「ハルキウ電撃戦」の成功、ヘルソン州のドニプロ川西岸にいたロシア軍を撤退させることができたのだ。

 その最大の立役者がザルジニー大将だった。

 彼が解任された今、「ソ連の将軍」と呼ばれることもあるウクライナ軍総司令官シルスキー大将が、「小さなソ連軍」にならないためのザルジニーの軍改革を引き続き堅持するかが問われている。

 2024年初において、ウクライナを取り巻く環境は非常に厳しいものがある。

 その厳しい状況の中で、この戦争に勝利するためにも、ウクライナ軍が小さなソ連軍にならないように、最新の技術を活用した兵器の開発・取得、最新の戦略・作戦・戦術・戦法を開発し、徹底的な訓練を実施することが重要になる。

 本稿においては、「小さなソ連軍」にならないための方策について考えてみたい。