共和党の候補者選びで初戦となるアイオワ州で圧勝したトランプ前大統領(写真:AP/アフロ)共和党の候補者選びで初戦となるアイオワ州で圧勝したトランプ前大統領(写真:AP/アフロ)
  • 次期米大統領選の候補者選びが進んでいる。1月16日にアイオワ州で行われた最初の共和党党員集会でトランプ前大統領が圧勝した。
  • 11月5日投票の大統領選でトランプ氏が民主党の現職バイデン氏と争う可能性が現実味を帯びてきたが、選挙戦と並行してトランプ氏が抱える裁判の行方なども見逃せない。
  • 次の米大統領が誰になるかによって、米国の民主主義や国際情勢を大きく左右することになる。(JBpress)

(小原 雅博:東京大学名誉教授、元外交官)

早々と終わりそうな共和党の候補者選び

 2024年は世界で50の国政選挙と欧州議会選挙が行われる「選挙の年」である。自由で公正な選挙とは程遠い形だけの選挙も少なくないが、その結果が外交や国際政治を変えるようなインパクトを持つ選挙もある。中でも重要なのが、11月5日の米国大統領選挙だ。この選挙の結果は、米国の内政・外交のみならず、世界の平和と安定にも大きな影響を与える。

 1月16日にアイオワ州で行われた最初の共和党党員集会で、トランプ前大統領が圧勝し、圧倒的存在感を見せつけた。通常、大統領選挑戦者が誰になるかは3月の「スーパーチューズデイ*1」までは分からないというのが過去の例であるが、今年の共和党候補者選びは事実上、早々と終わりそうなトランプ氏の勢いである。

*1:予備選と党員集会が最も多く開催される2月または3月上旬の火曜日。2024年は3月5日に16の州で行われる。全代議員の1/3が決まるため、選挙戦の流れを決めるとも言われるが、この日に勝利した候補者が正式な党の大統領候補とならなかった例もある。

 この結果、夏の共和党大会でトランプ氏が正式に候補者指名を受け、2020年に続き、再びバイデン大統領と対決する公算が高まっている。そのシナリオに立って、大統領選挙を展望すれば、現時点で、筆者は3つの点に注目している。

どちらが当選しても退任時には80代という高齢者対決

 第一に、82歳のバイデン大統領と78歳のトランプ前大統領という高齢者同士の対決となることだ。どちらが大統領になろうとも、退任時には史上初めて80代という記録を作ることになる。健康上の問題が起きる可能性は排除できない。

 彼らが大統領を務めるまで史上最高齢の記録を保持したレーガン大統領は77歳でホワイトハウスを後にした4年後にアルツハイマーであることを公表した。しかし、彼の息子はその20年後に、父が大統領職にある時に既に病気が進行していたと語っている。バイデン氏が再選を果たせば、二期目の大統領任期を終える時には86歳となる。

 バイデン氏には、2020年の大統領選挙の前から認知症との指摘がなされてきた。この点は共和党の格好の攻撃材料とされてきた。実際、大統領となってからも、用意されたメモはあっても、しばしば失言した。

現職のバイデン大統領に対しては、しばしば認知症ではないかと指摘されてきた(写真:ロイター/アフロ)

 バイデン氏の年齢は、民主党にとっても悩ましい問題である。しかし、現職が出馬しないと宣言しない以上、かつてのジョン・F・ケネディのような若い候補の擁立は困難だった。トランプ氏の失言癖も強まっているとの指摘がある。共和党候補者のニッキー・ヘイリー氏は、70歳を超える高齢の政治家には認知機能検査を行うべきだと主張している。