複雑な経営権継承過程

 それ以外に、複雑な経緯をたどった経営権継承過程が明らかになったことにも関心が集まっている。

 そもそも、どうやって崔泰源会長は2兆ウォンもの価値がある「SK」の大株主になったのか?

 始まりは、1994年、崔泰源会長が2億8000万ウォンでグループ企業「大韓テレコム」の株式の49%にあたる70万株を取得したことだ。

「大韓テレコム」は別のグループ企業「SKコンピューター通信」を吸収合併して「SK C&C」と社名を変更した。

 グループ企業の情報処理業務などを請け負ってSK C&Cは成長し、2009年に上場した。

 その後、2015年にSK C&CがSKを吸収合併した。

 崔泰源会長は合併当時、SK C&Cの株式を33%保有しており、合併後には新会社「SK」の株式23%を保有することになった(今の保有比率は17.7%)。

 このSKはグループ企業の頂点にあり、通信サービスのSKテレコム株30%、エネルギー企業のSKイノベーション株36%を保有する。半導体メーカーのSKハイニックスはSKテレコム傘下にある。

 1994年に2億8000万ウォンで取得した株式が、いまは2兆ウォンの価値があるのだ。

 ちなみに大韓テレコムの前身は「鮮京(ソンギョン=SK以前のグループ名称)テレコム」で1991年設立だ。

 崔泰源会長と盧素英氏の結婚(1988年)の3年後にできた会社だ。

 韓国紙デスクは一連の経緯を見ながらこう話す。

「SKに限らず韓国の財閥は急成長して企業価値も一気に大きくなった。崔泰源会長の時代でさえ経営権を継承するのにこんなに手の込んだ複雑な手法を使わざるを得なかった」

 これだけ苦労しても崔泰源会長のSK株保比率は17.7%に過ぎない。離婚訴訟の判決が出ただけで、「会長が株式の売却を迫られたら経営権はどうなるのか?」という声が一気に上がった。

 さらに企業価値が大きくなった今からは、「世襲」はさらに難しくなったとの見方が多い。

 今回の離婚訴訟は、韓国財閥の経営権継承と支配構造について改めて考えさせられる機会にもなっている。