この1枚の写真がトランプ氏を大統領に当選させたともいえなくもない(7月13日ペンシルベニア州バトラ―で、写真:AP/ロイター)

トランプ政権への期待と恐れ

 ドナルド・トランプ氏が圧勝した大統領選から3週間、主要メディアはトランプ氏が次々と発表する閣僚、ホワイトハウス人事の顔ぶれに「Bootlicker Cabinet」(へつらい内閣)「Bedfellows Cabinet」(呉越同舟内閣)などと名前をつけ、相変わらずトランプ氏の一挙手一投足を冷ややかに見ている。

 世論調査では59%が支持、41%が不支持と「何をやり出すか分からないトランプ」に対する期待と不安が錯綜しつつ、現状打開への楽観感が滲み出ている。

 だが、民主党支持者の85%がトランプ政権への懸念・恐れを抱いており、選挙後も選挙前と変わらぬ危険な分裂状態が続いている。

CBS News poll finds Trump starts on positive note as most approve of transition handling

 こうした不安定な状況下の11月23日、民主党の地盤カリフォルニア州でトランプ次期大統領と家族を皆殺しする計画を企てていた男が逮捕された。

 また、ニューヨークではトランプ氏が閣僚に指名した複数の候補やその家族が、爆破予告などの脅迫を受けていたことが明らかになった。

 カリフォルニア州で逮捕されたのはアリゾナ州出身のラティーノ、マニュエル・トマヨ=トレス容疑者(年齢不詳)。

 7月13日、ペンシルベニア州バトラーで演説中にトランプ氏が狙われ、九死に一生を得た。

 銃弾が耳をかすめ、頬に血を流したまま右手を上げて「ファイト、ファイト」と叫んだ雄姿に、支持者たちはトランプ氏を「殉教者」扱いし、選挙戦に勢いをつけた。

(オハイオ州の彫刻家は現在、その姿を象ったブロンズ像を制作中、就任式までに完成を目指している)

 トランプ氏はその後、アリゾナ州グレンデールで事件後初めての遊説を行った。トレス容疑者はその直前、遊説予定地周辺を事前調査していた。

 地元警察は、最近になって押収していたトレス容疑者のビデオ(8月23日録画)にトレス容疑者がトランプ氏と家族を殺害すると予告している映像を見つけ出した。

「お前を殺す。息子や家族全員を殺す。お前の顔に穴をあけてやる」

「白人の特権を使い、さらにシークレット・サービスを使ってお前は俺の娘を殺した。ほかの子供たちを人身売買した」

「お前たちは最低な生活をしているクズ野郎だ。お前らの薄汚いツラに唾をかけてやる。マザー・ファッカー」

Arizona man charged with threatening to kill Donald Trump

 押収したビデオ中には自動小銃「AK-15」を構えたトレス容疑者の映像もあった。

 トレス容疑者は2003年にはDVなどで起訴され、6年間服役。その後、2023年には銃の不法購入未遂で逮捕された前科がある。

 トレス容疑者には子供はおらず、トランプ氏一家皆殺しの動機が実際には何なのか不明だ。精神的問題を抱えていた可能性も指摘されている。