外資の誘致も大規模な雇用創出につながらず

 モディ氏は2014年の政権発足時から「メイク・イン・インディア」の旗印の下、雇用創出能力が高い製造業の振興に努めてきた。インド政府は法人税の引き下げなどを行い、米電気自動車(EV)大手テスラや米アップルなどのグローバル企業の誘致に躍起になっている。だが、大規模な雇用が創出される結果につながっていない。

 そればかりか、「モディ政権が縁故資本主義(政府との契約などで特定の大企業を優遇)を進めたせいで、英国の植民地時代よりも格差が広がった」との批判が出ている。

インド北部アヨディヤのイスラム教モスク跡地に建立されたヒンズー教寺院の落成式に出席したモディ氏=2024年1月(写真:AP/アフロ)

 このようなアンバランスを解消するため、インドの専門家からは「政府は雇用創出に貢献する中小企業を育成せよ」との声が上がっている。

 インドでは中小企業向け金融は発達しておらず、税制面でも不利な状況に置かれていることから、非農業部門の雇用における中小企業の約4割に過ぎない。この比率は世界平均から見てかなり低い水準だと言わざるを得ない。

 モディ氏が進めるヒンズー教徒向けのアイデンティティー政治も経済にとってマイナスだ。