5月20日、台湾の新総督に就任した頼清徳(写真:ロイター/アフロ)

 台湾初の女性総統、蔡英文が2期8年の任期を終えて退陣し、同じ民主進歩党政権で副総統だった頼清徳が新総統に就任して3週間が経過した。台湾の議会では中国国民党など野党の突き上げで、内政は早くもヒートアップしている。

 他方、中国からの政治圧力が過激さを増し、台湾海峡をめぐる事態は深刻だ。しかも台湾外交にとって最重要の米国、日本との関係には不安材料もある。こうした頼清徳を取り巻く内憂外患で、とりわけ注視すべき「3つの内憂」と「3つの外患」を指摘したい。(敬称略)

(河崎 眞澄:東京国際大学国際関係学部教授)

米国からの武器調達で予算審議に足かせ

 3つの内憂、その1は「ねじれ国会と与野党の対立激化」だ。

 総統就任からわずか8日後の5月28日、国会にあたる一院制議会の立法院で、頼清徳に難題が突き付けられた。立法院への政治報告を総統に義務付けるなど、政権監視を通じて立法院の権限を強化する関連法が、国民党など野党の賛成多数で可決された。

 法案採決をめぐっては、頼清徳の総統就任直前、5月17日に立法院で与党、民主進歩党の立法委員(国会議員)らが強硬に反発し、野党議員らとつかみ合いの衝突となった。6人が負傷して搬送されるなど、与野党対立が顕在化していた。

 偶然にも1996年以来、台湾の総統選は米大統領選と同じ年に行われる。現在は立法院(定数113)の議員全改選も同時に投開票される。今年1月13日の選挙では、与党の民進党が改選前に比べ11議席も失ったことが、ねじれ国会を生む要因となった。

5月17日、立法院の本会議で衝突する国民党や民進党などの立法委員ら(写真:共同通信社)

 蔡英文政権が推進した公務員の年金カットや、アジア初の同性婚合法化などには異論も出た。さらに選挙期間中に問題視された民進党内部のセクシャルハラスメント疑惑への反発や、総統と立法院の権力が一党に集中することへの懸念も、民進党が議席を減らした背景にある。

 他方で最大野党の国民党は、15議席増やして与党の民進党よりも1議席多い52議席を握った。無所属で当選した2議員も国民党寄りだ。2000年に初の政権交代を果たした民進党だったが、陳水扁の政権時代も国民党とのねじれ国会で混乱した。

 予想される今後のねじれ国会の混迷要因は主に2つある。