まず5月28日に可決された立法院の権限強化など、野党が多数派を握る立法院を舞台とした与野党の政治闘争が激化すること。そこには頼清徳政権を敵視する中国側の思惑も見え隠れする。

 頼清徳は総統就任以前から、台湾の防衛上、重要なカギを握る米国からの武器調達を拡大すると表明している。自前で製造した通常型潜水艦が昨秋、米国などの協力で完成したが、さらに最新鋭戦闘機や原潜、イージス艦などの調達も視野に入れる。

 しかし、武器調達予算に関する審議が、立法院ですんなり進む可能性は低い。対中政策で融和的な姿勢を見せる国民党は、台湾が防衛力を高めることになる米国製の最新鋭武器の調達に難色を示すのは必至だ。審議引き延ばしや廃案を狙うだろう。

 もうひとつは、国会議長にあたる立法院長に国民党の韓国瑜が選任されたことだ。韓国瑜は高雄市長のまま、2020年1月の総統選で国民党から出馬したが落選。加えて同年6月、リコール運動により、高雄市長を罷免されている。

立法院長・韓国瑜の議員外交に不安

 国会議員にあたる立法委員の時代から親中派で、派手な演説で大衆受けしてきたが、なぜか虚言や遅刻を指摘されることが多かった。高雄市長時代に、日本から著名な研究者数人が訪れた際、韓国瑜が大幅な遅刻を隠蔽しようと工作した疑惑が、現地紙で報じられている。

2月1日に国会議長にあたる立法院長に就任した国民党の韓国瑜(韓国瑜のFacebookから)

 そんな人物が議会のトップである立法院長ともなると深刻な問題になりかねない。国交を持たないため、日米欧などと政府間交渉ができない台湾では、議会を舞台にした議員外交が欠かせぬルートになる。だが国会議長が国際社会から信頼を得にくい人物なら、台湾の利益は毀損される。

 2つ目の内憂は「若者が第3勢力に熱狂」していることだ。