中国不動産市場がいよいよ危ない(写真:CFoto/アフロ)
  • 中国政府が2週間ほど前に打ち出した不動産市場救済策「517房市新政」の効果が見えない。むしろ、共産党中枢に激震が走っているほど、市場の状況は悪化している。
  • 住宅ローンの大幅緩和や売れ残った不動産を大規模に買い上げるプロジェクトを打ち出したが、むしろ狙いは不動産市場の救済ではなく別にあるのではないか。
  • かつて毛沢東は地主から土地を巻き上げ農民に分け与え、権威の確立とともに経済をコントロールしようとしたが、習近平国家主席も似たような政策を考えているのかもしれない。(JBpress)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国経済の危険な兆候がますますはっきりしてきた。

 5月17日に中国政府が打ち出した不動産市場救済の切り札、通称「517房市新政」の評価については、専門家たちはいろいろ分析していたが、私はこれは、うまくいかないと見ている。わずか政策発表後2週間にもう失敗だと断言するのは早すぎると言われるかもしれないが、6月頭に出てきたデータについて、中南海(共産党中枢)の経済がわかる関係者たちの間には激震が走っているらしい。

 517新政策とは5月17日に国務院新聞弁公室の記者会見で発表された「不動産市場の安定的発展最適化政策に関する通知」。この発表当日、中国A株市場の不動産指数が7%以上跳ね上がるなど、一時的に期待が募った。

 中身は大まかに言って、不動産市場救済のための3つの金融政策と、最後の切り札ともいえる4つ目の政策にわけられる。

 まず住宅購入の頭金比率を引き下げた。1軒目の不動産の場合、頭金は最低15%、2軒目の不動産は25%に引き下げられた。次に不動産購入ローンの金利下限が撤廃された。また住宅積立基金ローンの金利も引き下げた。

 そして、中央銀行は3000億元を低利(1年期限1.75%、4度のロールオーバー可能)で21銀行に貸与、この資金によっておよそ5000億元の資金を地方の国有企業に流し、不動産市場にだぶついている住宅在庫を購入させ、それを保障性住宅(安価な低所得者向け住宅、公団住宅のようなもの)に転用させる大プロジェクトを推進することを発表した。

 この4つめの不動産在庫の国有企業による買い取り政策は、一種の不動産価格買い支え政策でもあり、不動産価格の暴落を食い止めるのも1つの目的と見られていた。この4つの政策をまとめて「517房市新政」と呼ばれている。