
漫画を通してこどもや若者の居場所をつくる動きが、広がりつつある。絵と文字で構成される漫画は文字が苦手な人でも親しみやすく、多種多様な登場人物の生き方に自らを重ねる共感体験が自己肯定感を育む効果も期待されている。
2023年度に不登校だった小中学生は34万6482人(文部科学省の調査より)、2024年に自殺で亡くなった小中高生は527人(厚生労働省発表の暫定値)で共に過去最多となるなど、こどもを巡る状況は厳しさを増している。こどもたちを孤立させないため各地で様々な取り組みが行われているが、今回は漫画を切り口とした居場所づくりに注目したい。
(山寺 香:フリーライター)
小学館集英社プロダクションが運営する「第三の居場所」
地域でこどもたちを支えるために、私たち一人一人に何ができるのか。
そのヒントを知りたくて、学校と家庭以外の「第三の居場所」として神奈川県大和市の公共施設と東京都立川市の小学校に開設された「まんがLiving*(リビング)」を取材した。
*:「まんがLiving」は株式会社小学館集英社プロダクションの登録商標
神奈川県大和市の「文化交流拠点シリウス」(市立図書館や文化ホールなどが入る複合施設)。6階の生涯学習センターの隅にあるこぢんまりとしたスペースには、漫画約500冊が並ぶ本棚と、小さなテーブル、そして小さなソファが置かれている。
ここは、小学館集英社プロダクションが運営する「まんがLiving(リビング)」だ。
誰もが漫画を通して共感し合える居場所にしようと、2023年11月に開設された。本棚の傍らには、漫画の感想を共有できるパネルが設置され、言葉やイラストを描いた付箋を自由に貼り付けることができる。
ここでこどもたちと漫画との出会いをアシストするスタッフ「まんがLivingコンシェルジュ」を務めるのは、同社社員の山辺さおりさんだ。
取材の日、山辺さんは「勉強頑張ろう~!!」の言葉にドラえもんのイラストが添えられた付箋が、パネルに新たに貼られているのに気づいた。まんがLivingに通う受験生が書いたとみられる。