「証拠ねつ造濃厚」に真っ向から反発

 袴田事件の再審公判で検察側は、袴田さんが真犯人であると立証する際、半世紀前の公判とほぼ同じ主張を繰り返しました。弁護側は新証拠を示したうえ、袴田さん有罪の決め手となった衣類5点について静岡県警の捜査員らがねつ造したものだと主張していますが、検察側は「非現実的で実行不可能な空論だ」と切り捨てています。

 その一方、再審開始を認めた東京高裁の決定への反発も大きいと言われています。

 東京高裁は決定のなかで、衣類5点はねつ造だった可能性が「極めて高い」と指摘し、弁護側の主張に沿った判断を展開していました。証拠ねつ造の疑いが濃厚としてスタートした再審。それをそのまま受け入れることはできず、「ねつ造の疑い」だけは払拭しておきたいとの考えがあるからです。

 袴田事件が起きたのは1966年。今と同じ6月のことでした。高齢になった袴田さんは9月の判決で、どんな司法判断を聞くことになるのでしょうか。

フロントラインプレス
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