八坂神社 本殿 写真=Gengorou/イメージマート

(合同会社かぐやライゼビューロー代表社員:杉江 真理子)

主に海外からの観光客を対象とする旅行会社の代表を務め、インバウンドのニュースサイトにも携わっている杉江真理子氏。今回の八坂神社でのトラブルから見える、意外と知られていない通訳ガイドの実情と問題点について解説する。

問題を起こしたガイドは無資格の可能性が高い

 京都の八坂神社といえば、地元で「祇園さん」と呼ばれ親しまれているだけでなく、国内外から多くの参拝客が訪れる有名神社だ。そこである事件が起こった。ガイド引率の外国人グループが国宝でもある神社本殿の「鈴の緒」を柵に叩きつけて遊んでいたという。それを地元の日本人女性が見かねて注意したところ、日本在住の外国人の男性ガイドに罵倒されたというのだ。

 2024年5月23日夜にX(旧Twitter)に投稿された、その動画が波紋を呼んだ。そこには注意した日本人女性を罵倒するガイドと、翻訳アプリを利用しながら反論する女性の声が生々しく残っていた。あいにく、外国人グループが「鈴の緒」を柵に叩きつけている現場の動画がなく、神社側も公式にはこの様子を把握していないとしている。

 Xで該当の動画が拡散され、そのガイドの会社名もすぐにわかった。会社といっても法人登記されていないようなので屋号だろうか。ホームページは消されていたが、ツアー募集をするポータブルサイトには履歴が残っていて、いくつかのウォーキングツアーの募集が載っていた。残念ながら、評判は芳しくないようで否定的なコメントもみかけた。

 その男性ガイドの名前もわかったので、私は全国通訳案内士のリストをあたってみたのだが、それらしき名前は見当たらない。京都市には認定通訳ガイドの制度もある。こちらにもガイド登録はないようだ。彼は、まず無資格のガイドとみて間違いないだろう。

八坂神社の野村明義宮司  写真/共同通信社