今日は訪日客でごった返している=写真はイメージ(写真:Andriy Blokhin/Shutterstock)
  • ゴールデンウィーク後半戦、観光地はどこもかしこも人が多くてうんざりしている人も少なくないのでは。
  • 日本政府観光局(JNTO)によると3月の訪日客数は308万1600人で過去最高。中でも京都の混雑ぶりは「オーバーツーリズム」の典型とも言われる。
  • 『観光公害─インバウンド4000万人時代の副作用』の著者で観光学が専門の佐滝剛弘氏に、世界屈指の観光都市を取り巻く「観光公害」の実態を聞いた。(JBpress)

(湯浅大輝:フリージャーナリスト)

「観光都市」が招く人口減

──訪日客数が激増しています。中でも、日本屈指の観光スポットである京都市をめぐる「オーバーツーリズム」の問題はここ数年、注目を集めています。今、何が起きているのでしょうか。

佐滝剛弘氏(以下、敬称略):京都市では長らく、オーバーツーリズムの問題が叫ばれてきました。目立つもので言えば、ゴミの散乱やバスの混雑などです。

 ただ、最も甚大な被害は「目に見えないもの」です。それが「人口減少」という問題です。

「観光都市」というイメージが先行するあまりホテルが乱立し、マンションを建てる土地がなくなってきています。

 もともと京都市は、任天堂やワコール、京セラといった世界的企業が本社を構える産業都市です。これらの企業の社員も会社近くに住みたいと考えているのですが、市内はホテルの建設ラッシュでマンションが建つ土地が少ない。やむなく、滋賀県や京都南部から通勤するという社員が増えているのです。

佐滝 剛弘(さたき よしひろ)城西国際大学 観光学部教授
1960年、愛知県生まれ。東京大学教養学部卒。NHKディレクター、高崎経済大学特命教授、京都光華女子大学キャリア形成学部教授などを経て現職。NPO産業観光学習館専務理事。世界遺産、産業遺産、近代建築、交通、観光、郵便制度などの取材・調査を続ける。著書に『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード』『観光地「お宝遺産」散歩』『高速道路ファン手帳』(以上中公新書ラクレ)など。祥伝社新書から『「世界遺産」の真実』『それでも、自転車に乗りますか?』を上梓。

 実際、京都市の2022年と2021年の人口減少数は全国でもワースト1位。人口が減るということは、税収も少なくなることを意味します。

「観光でお金が落ちるから良いじゃないか」と思う人がいるかもしれません。ただ、京都市の税収に占める観光による効果は12.8%程度と推測されています*1

*1京都市のホームページ

 さらに、京都市内のホテルは外資系企業が多く、日本の企業にお金が落ちていない場合もあることも指摘しておかなければなりません。