働き方改革に伴う長時間労働の制限によって、物流・建設業界などを中心に人手不足が常態化する「2024年問題」が早くもあちこちで顕在化しているが、団塊の世代が後期高齢者(75歳)となる2025年はさらに深刻だ。社会保障の担い手である労働人口の大幅な減少は国民生活に大きな影響をもたらし、さまざまな格差も拡大する。縮みゆく国・ニッポンの末路はどうなってしまうのか──。ジャーナリストの山田稔氏が、「2025年問題」が現代社会に新たに突きつける課題をシリーズで検証する。第1回目は「公共交通の崩壊」だ。
シリーズ《2025年問題の衝撃》ラインアップ
■2030年に3万6000人不足する路線バスの運転手、減便や廃止で住民生活は大パニックに陥る!(本稿)
■相次ぐ「病院倒産」で崖っぷちの医療現場、医師不足や偏在のシワ寄せは患者に(2024.5.10)
■全国各地で「人手不足倒産」や「後継者難廃業」が続出、このままでは外資に食い尽くされる!(2024.5.17)
■全国で22万人の職員が不足する介護現場、「超老老介護」や「ヤングケアラー問題」も深刻化(2024.5.31)
■窃盗からわいせつまで「超高齢者犯罪」が頻発するシルバー危機社会の深刻度(2024.7.25)
バス運転手の拘束時間を減らすため「減便」を決断
運転手の長時間労働を是正する法規制の影響で、もともと不足していた運転手がさらに足りなくなっている。中でも各地で路線バスの運転手不足が発生し、減便せざるを得ない状況に追い込まれている。北海道では4月以降の平日で1日500便以上の減便となったと報じられている。
これは「働き方改革関連法」の影響だ。運送業の働き方改革や労働環境改善を目指した「改善基準告示」が2024年4月1日に施行され、バスやトラック、タクシーの運転手を対象に「年960時間以下」(特別条項)などとする残業上限が導入されたのだ。
具体的な基準はどうなっているのか。バスのケースを見てみよう。
① 1日の拘束時間/13時間を超えないことを原則とし、最大でも15時間
② 1年・1カ月の拘束時間/年3300時間以内、月281時間以内
③ 1日の休息時間/11時間以上を基本とし、9時間を下回らない
④ 運転時間/2日平均1日(2日を平均した1日当たりの運転時間)9時間
この「残業規制」に伴い、全国のバス事業者が「そもそも十分な数が確保できていない運転手の拘束時間を減らすために減便に踏み切らざるを得ない」(バス業界関係者)という状況に追い込まれているのだ。