医師不足が深刻化している(写真:S_L/Shutterstock)

 働き方改革に伴う長時間労働の制限によって、物流・建設業界などを中心に人手不足が常態化する「2024年問題」が早くもあちこちで顕在化しているが、団塊の世代が後期高齢者(75歳)となる2025年はさらに深刻だ。社会保障の担い手である労働人口の大幅な減少は国民生活に大きな影響をもたらし、さまざまな格差も拡大する。縮みゆく国・ニッポンの末路はどうなってしまうのか──。ジャーナリストの山田稔氏が、「2025年問題」が現代社会に新たに突きつける課題をシリーズで検証する。第2回目は「医療格差の拡大」だ。

シリーズ《2025年問題の衝撃》ラインアップ
2030年に3万6000人不足する路線バスの運転手、減便や廃止で住民生活は大パニックに陥る!(2024.4.30)
■相次ぐ「病院倒産」で崖っぷちの医療現場、医師不足や偏在のシワ寄せは患者に(本稿)
全国各地で「人手不足倒産」や「後継者難廃業」が続出、このままでは外資に食い尽くされる!(2024.5.17)
全国で22万人の職員が不足する介護現場、「超老老介護」や「ヤングケアラー問題」も深刻化(2024.5.31)
窃盗からわいせつまで「超高齢者犯罪」が頻発するシルバー危機社会の深刻度(2024.7.25)

 

>>【表】都道府県別に調べた医師数の上位と下位(人口10万人当たり)ほか

医師の労働時間の上限規制、現場が否定的に捉えているワケ

 2024年4月から医師の労働時間の上限規制が導入された。2022年5月には、100日連続勤務、前月の残業時間200時間超という過酷な労働環境下に置かれていた若手医師が自ら命を絶ち、社会に大きな衝撃を与えたが、果たして残業上限規制で医師の労働環境は改善されるのだろうか。

 今回の上限規制では、原則的な残業の上限が月45時間、年360時間とされた。ただし、急患などの対応に迫られる医師の世界は、一般のビジネスマン並みの運用では通用しない。そこで、全ての医療機関に勤める勤務医を対象としたA水準、地域医療暫定特例水準ともいわれるB水準(救急機関などが対象)、そして高度技能の習得や臨床研修に用いられる病院が該当するC水準と例外規定が設けられた。

 A水準の上限は「月100時間未満/年間960時間以下」となっているのに対し、B水準、C水準の上限は「月100時間未満/年間1860時間以下」と大幅に緩和されている。病院の実態に即した規制のあり方ということなのだろう。

 2023年11月に全国医学部長病院長会議が公表した調査結果によると、大学病院に勤務する医師約4万8082人のうち1万7756人(37%)が960時間~1860時間、87人が1860時間超を申請見込みとなっていた。勤務医の4割近くが上限最大値近くまでの残業の意思を示しているのである。

 一方、社内規定SaaS「KiteRa」の開発・運営を行う株式会社KiteRa(キテラ)が20代以上の医師、男女360人を対象に行った「医師の2024年問題実態調査」によると、約4割が上限規制の範囲内で勤務できないと回答した。

 また、時間外労働の上限規制に対しては「賛同する」が34.4%、「賛同しない」が21.7%、43.9%が「どちらともいえない」で、評価が分かれた。上限規制の実施によって、医療の質がどうなるかについては、「低下する」「やや低下する」が合わせて54.4%と過半数が否定的な捉え方をしている。

 懸念事項としては、「申請を行わない残業(サービス残業)の誘発」が47.8%、「病床の逼迫や救急搬送の困難」が46.1%だった。働き方改革を目的に導入された上限規制だが、当事者たちは実施前から懐疑的な受け止め方をしていることが分かる。