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 団塊の世代すべてが75歳以上の後期高齢者となる、いわゆる2025年問題を目前に控え、医療制度改革が待ったなしの状況となっている。現在、3割となっている自己負担の引き上げにはかなりの反発が予想される中、日本医師会が医療保険で優遇されている国家公務員と大企業社員の保険料率引き上げを提言している。乱暴に言ってしまえば、「上級国民」からもっと徴収すればよいという話だが、料率の引き上げは効果があるのだろうか。(加谷 珪一:経済評論家)

日本の健康保険は5種類

 医療制度について適切に議論するためには、日本の公的医療制度の全体像を把握しておく必要がある。

 日本の医療制度は、国民皆保険制度となっており、全員が何らかの健康保険に加入する必要があるが、健康保険には大きく分けて以下の5種類がある。

「健康保険組合」は主に大企業が独自に運営する健康保険で、当該企業の社員が加入する。企業が単独で設立する場合には、常時700人以上の社員が在籍している必要があり、2社以上が協同で設立する場合には3000人以上の社員数が必要となる。

 独自で健康保険組合を設立しない中小企業の社員は、全国健康保険協会が運営する「協会けんぽ」に、公務員の場合には「共済組合」に、それぞれ加入している。これらに該当しない自営業者などは、各市町村が運営する「国民健康保険(国保)」に、75歳以上の後期高齢者については「後期高齢者医療制度」に加入しているはずだ。

 各制度の加入者数は、健康保険組合が約3000万人、協会けんぽが3600万人、共済組合が900万人、国保が3300万人、後期高齢者が1600万人となっている。