中国は監視社会だが…(写真:Zapp2Photo/Shutterstock)
  • 江蘇省蘇州市で6月24日、日本人の母親と男児が中国人男性に切りつけられた。スクールバスを待っていたという。
  • 当局は「偶発事件」と説明するが、2週間前には吉林省吉林市の公園で米国人4人が襲撃されており、外国人排斥の機運が高まっているのではないか。
  • そもそも日本はこうした事件に対して弱腰で狙われやすい。数年おきに反日機運が高まる周期にいま突入しており、警戒が必要だ。(JBpress)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 江蘇省蘇州市で6月24日、スクールバスの停留所で待っている日本人の母親と男児が中国人男に突然切りつけられ負傷した。男はスクールバスに乗り込もうとしたが、バス案内係の中国人女性が体を張って阻止。女性も刺されて意識不明の重体という。

 日本人母子には生命の危険はないという。日本の子供たちを守るために大けがを負った中国人女性の早い回復を祈るばかりだ。

 犯人はすぐ捕まったが、動機はまだ明らかにされていない。容疑者は52歳の蘇州に出稼ぎにきていた現在無職の男。2週間前に、吉林省吉林市の北山公園で米国人4人を含む5人がやはり失業中の55歳の男に突然切りつけられて負傷した。わずか2週間の間に、外国人が被害者となる襲撃事件がかさなり、中国社会に蔓延する排外的感情からくる現代版義和団事件ではないか、という見方も広がった。

 吉林省の事件については私もこのコラムで紹介したが、その時に感じた、次に被害者になるのは日本人ではないかという嫌な予感が的中してしまった。

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 外交部報道官の毛寧は、この事件について記者から質問を受けて、「偶発事件」であると強調。日本人が狙われた事件なのか、という質問に対して「世界中どこでも起こっている事件だ」と正面からの回答をさけた。そして「中国は世界で一番外国人にとって安全な国の一つ」と主張した。

 だが、私はこれは、起こるべくして起きた必然的事件だと思う。注意喚起の意味もこめて、改めてその根拠を説明したい。