- 中国で民間企業が次々と追徴課税されている。20〜30年前の過少申告を摘発されるケースもあり、各社戦々恐々としている。
- 財政難の地方政府が税収を補うために摘発を強化しているという見方もあるが、習近平政権が計画する税制改革の前触れとの噂もある。
- 中国に進出している日本企業や駐在員もターゲットになる懸念もあり、注意が必要だ。(JBpress)
(福島 香織:ジャーナリスト)
20~30年前に中国に駐在していた人にお聞きしたい。当時みなさんは、中国できちんと税金を納めていただろうか。
私は産経新聞記者として北京特派員を務めていたとき、本社から税金はごまかすことなく支払うようにと厳しく言われていた。当時産経新聞は一番中国当局に手厳しい記事を書くと言われており、そういった記事を書き続けるためにも、一切の不正、ズルをして、弱みを当局から握られるスキを与えてはならない、ということだ。
わざわざそういう指示があったのは、当時、税金は過少申告するのが当たり前だったからだ。当時の中国の平均給与と日本の特派員や駐在員の給与は10倍、数十倍、あるいは百倍以上の格差があり、普通の日本人給与だと、半分以上が税金で持っていかれたりする。
だからメディアを含め大抵の企業は駐在員給与を日本の口座と中国の現地口座に7:3から9:1ぐらいの割合で分けて振り込み、給与を少なく見せて税金額をごまかしていた。
それが当たり前で、中国人商務弁護士がむしろそうしろ、とそそのかす。普通に税金を納めるのはよほどのバカや無能のすること、といわれる。
個人商店や小商いも粉飾決算は当たり前だった。そうして民営経済は急速に発展し、中国のGDP成長を支えてきたのだ。そういう風潮が変わったのは、比較的最近のこと。
だから30年前の脱税分、過少申告分をいまさら罰金を上乗せして取り立てられたら、パニックだ。今、まさにそういう事態が起き始めている。