(Elena Uve/Shutterstock.com)

 いま、ニコニコ動画を提供しているKADOKAWAを襲ったサイバー攻撃が大変な騒動に発展している。

 ことの発端は、6月8日にニコニコ動画がランサムウェア(身代金要求型ウイルス)攻撃を受けてサービスが停止した事件だ。KADOKAWAの子会社であるドワンゴが運営するニコニコ動画にアクセスできなくなり、その攻撃はKADOKAWAにも影響は及んでいる。しかもニコニコ動画がサービスをすべて再開するのにはまだ1カ月以上がかかると同社が発表している。

 それだけなら、よくある単なるサイバー攻撃被害の話であるが、この件ではさらなる物議が起きている。理由は、オンラインメディアであるNewsPicksが、〈【極秘文書】ハッカーが要求する「身代金」の全容〉という暴露記事を掲載したからだ。

NewsPicksの記事

NewsPicksの報道に怒り心頭

 記事にはニコニコが、ランサムウェアを仕掛けて身代金を要求している攻撃側と続けている身代金交渉の内幕が詳細に記されている。

 この記事を受けて、いまもランサムウェア対応を続けているドワンゴ側からNewsPicksに対する激しい非難が噴出した。NewsPicksのプロピッカーでもある夏野剛社長は、同記事のコメント欄に「このような記事をこのタイミングで出すことは、犯罪者を利するような、かつ今後の社会全体へのサイバー攻撃を助長させかねない行為です」と記し、損害賠償など法的措置の検討もすると明記した。

KAWOKAWAグループのシステム障害について謝罪・説明する夏野剛社長。企業のトップ自らがランサムウェア攻撃の被害に遭ったと説明するのは珍しい(YouTubeの「ニコニコ公式チャンネル」より)

 NewsPicksとしては、「知り得た情報を誰よりも先に報じたい」というメディアとしての自然な動機があったのだろう。だがそれを考慮しても、今回の記事は、センセーショナルに話題を煽る報道の典型と言える。