「無罪が確実」でも検察は主張を曲げない

 最高裁は「白鳥決定」と呼ばれる1975年の決定によって、再審に関する1つのモノサシを示しています。それは再審においても「疑わしきは被告人の利益に、という刑事裁判の鉄則が適用される」というものでした。再審そのものは、確定判決を覆すような新証拠があって初めて開始決定が出されます。

 つまり、無罪を裏付ける決定的な新証拠が存在し、かつ、その再審では「疑わしきは被告人の利益に」の原則を貫くのですから、再審は始まった時点で無罪になる確率がかなり高いのです。実際、死刑囚からの請求が認められて始まった再審(4大冤罪事件)は、いずれも無罪が確定しました。

元死刑囚の敬称略。過去の報道や日弁連の資料からフロントラインプレス作成
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 これらの無罪判決は1980年前後に集中しており、当時は「死刑台からの生還」という言葉も流行しました。

 ところが、これら4つの事件を見てみると、再審開始の時点で無罪は確実と言われながら、再審公判の求刑で検察側はいずれも原審と同様に死刑を求刑していたことがわかります。無罪が確実と言われながら、なぜ検察はいつも死刑を求刑してきたのでしょうか。