袴田巌さんの再審第14回公判で静岡地裁に向かう姉ひで子さん(中央)と弁護団ら=2024年4月(写真:共同通信社)

 1966年に静岡県清水市(現・静岡市清水区)で一家4人が殺害された事件で死刑判決が確定し、長く死刑囚の立場に置かれていた元プロボクサー・袴田巌さん(87)の再審公判(やり直し刑事裁判)が5月22日、静岡地裁で結審します。この袴田事件を機に再審法を見直すべきだとの議論も高まってきました。

 日本では再審のハードルが極めて高く、冤罪の可能性が強くても再審は簡単に認められないからです。弁護士や研究者らは再審制度の改正を求めており、今年に入って超党派の議連も生まれました。

 専門記者グループ・フロントラインプレスによるやさしく解説。今回は「再審法改正」です。

フロントラインプレス

袴田さん、無実訴え再審開始まで40年以上

 今年3月27日、静岡地裁の前で小さな街頭活動がありました。参加したのは日本弁護士連合会(日弁連)の役職者らです。死刑が確定しながらも一貫して無実を訴えていた袴田さんの保釈が認められて、この日がちょうど10年。それに合わせて法曹界の人たちが「冤罪の被害者を二度と作らないでほしい」と訴えたのです。

 訴えの焦点は「開かずの扉」と言われる再審の制度を立て直してほしい、という内容でした。

 再審の開始決定は、なかなか認められません。袴田さんの場合、最初の再審請求から実際の再審開始まで40年以上もかかっています。再審開始までの期間が長いと、そのまま拘置所・刑務所で過ごす期間も相当に長くなります。自身の無実を訴えている人にとって、その肉体的・精神的な労苦はたいへんなものでしょう。

 そうした事情を背景に、静岡地裁前でマイクを握った弁護士らは「再審に関する法律の早期改正」を特に強く訴えたのです。街頭活動の前後、日弁連の会長は静岡県知事や静岡市長を訪問し、関連法の改正に賛同してほしいと要請しました。

 では、現在の再審制度のどこが問題だというのでしょうか。