ある時期になると、色鮮やかな羽根を襟に着けている人がいます。とくに政治家や役所の職員に多いかもしれません。少し前は岸田文雄首相ら政府の要人が「緑の羽根」を上着の左襟に着けている姿がニュースで映し出されていました。緑の羽根は国土緑化期間に合わせて「緑の募金」に寄付をした証ですが、実は羽根募金にはさまざまな種類があります。それぞれの羽根はどんな意味を持っているのでしょうか。過去の歴史も振り返りながら、専門記者グループのフロントラインプレスがやさしく解説します。
緑、赤、青、黒…それぞれ何の募金?
まずは、下の図を見ていただきたいと思います。緑、赤、青、黒、水色、黄色、白、オレンジ。たくさんの羽根の種類があり、それぞれの募金の意味と実施団体をまとめたものです。あなたが知っているものは、いくつあるでしょうか。
新緑まぶしい今の時期に目立つのは「緑の羽根」です。
緑の羽根募金は森林の育成など国土の緑化を推進するための募金で、毎年春(1月15日〜5月31日)と秋(9月1日〜10月31日)に全国一斉に募金活動が行われます。今年は4月中旬に緑の羽根着用キャンペーンが行われ、岸田首相ら閣僚がしばらく緑の羽根を着用していました。左襟に緑の羽根を付けた閣僚らの様子を、ニュース番組などで観た人もいるかもしれません。
緑の募金が始まったのは、敗戦から間もない1950年のことです。米軍の空襲により、日本の都市部は壊滅的な被害を受け、復興のためには大量の木材が必要とされていました。また、それまでの乱伐もたたり、全国には千葉県のおよそ3倍、150万ヘクタールもの荒廃地が広がっていたと言います。
敗戦の混乱で国家財政も乏しかった時代です。「緑を復活させるためには国民一人ひとりの力が必要」という機運が高まり、政府主導で国土緑化推進員会が結成されました。これが現在の公益社団法人・国土緑化推進機構の前身です。
それから75年。天皇皇后両陛下が出席する年1回の「全国植樹祭」は春の恒例行事となり、募金活動は全国で行われるようになりました。
国土緑化推進機構の資料によると、近年は毎年20億円前後の寄付が個人や企業から集まっています。これを元にした国内事業の実績を見ると、直近の2022年には苗の植え付け・配布が201万本、森林の整備面積が1600ヘクタール余り。森林育成に携わるNPO団体などへの交付は8612件だったと報告されています。