岸田文雄首相や自民党の派閥幹部らがこのほど衆院の政治倫理審査会に出席し、自民党裏金事件に関する質問に答えました。真相解明にはほど遠い答弁が繰り返されましたが、「そもそも審査会での事実究明など無理」という声もあります。では、政治倫理審査会(政倫審)とはどういう役割と権限を持っているのでしょうか。専門記者グループのフロントラインプレスが、過去の経緯も振り返りつつやさしく解説します。
知らぬ存ぜぬで時間の無駄?
「安倍派幹部、関与否定して政倫審終了」
「西村・前経産相、『会計には関与していない』と弁明」
「現職首相が出席しても『時間の無駄』だった」
裏金問題に関する衆院の政倫審が2月29日と3月1日の2日間にわたって開かれた後、報道機関のニュースではこんな見出しが並びました。派閥の裏金がどのような経緯で始まったのか、誰の指示で金が動いていたのかなどについて、出席した派閥幹部は明確な回答を避け続けたからです。
例えば、安倍派の事務総長だった松野博一氏(前官房長官)は「事務総長の業務は派閥行事や組閣の際の推薦候補などの取りまとめだけ。経理には一切関わっていない。(派閥で6億円超に達する裏金の管理や支出を)誰が決めていたのか、全く知らないし、今も分からない」などと述べて自らの関与を否定しました。
他の派閥幹部も同様です。政倫審は今後、参院でも開催される見通しですが、衆院と似たような答弁が繰り返されて終わりそうです。
なぜ、政倫審で事実解明が進まないのでしょうか。もちろん、最大の理由は出席した派閥幹部たちが具体的な説明を避けたことにあります。それに加えて、政倫審の仕組み自体が限界を抱えているとの指摘もあります。
衆参両院に政倫審を設置することが決まったのは、1980年代のことです。戦後最大の疑獄事件のロッキード事件で田中角栄元首相が受託収賄罪などに問われ、有罪判決を受けたのが1983年。その2年後、国会は国会法を改正して第15章に「政治倫理」の項目を追加し、衆参両院に政治倫理審査会を設置することにしました。金権政治に対する国民の批判が空前の規模で広がったため、政治家は自ら襟を正す仕組みを設ける必要に迫られたのです。