(写真:Hakase/イメージマート)

子どもが被害者となる性犯罪が後を絶ちません。教員や塾講師といった教育関係者が加害者だったケースも目立ちます。こうした事件を減らし、子どもの人権を守ろうと、こども家庭庁は犯歴照会などを行う「日本版DBS」の創設を急いでいます。どのような仕組みなのでしょうか。性犯罪の未然防止にどんな効果が期待できるのでしょうか。専門記者グループのフロントラインプレスがやさしく解説します。

フロントラインプレス

英国では子どもと接するすべての職種で

 DBSとは、大人が学校や塾・スポーツクラブなど子どもと接する職業に就こうとする場合、性犯罪歴などがないことを証明する制度のことを指します。Disclosure and Barring Service(前歴開示・前歴者就業制限機構)の略称で、すでに欧州の主要国で運用が始まっています。

出所:子ども家庭庁「こども関連従事者の性犯罪歴等の確認に関する有識者会議」の報告書や法案骨子などからフロントラインプレス作成
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 英国のDBSは1986年に始まりました。公立の学校や病院に採用される職員を対象とした犯罪歴の事前チェックを義務化したのです。2012年には、子どもと接するすべての職種に拡大。ボランティアも対象に含めました。

 現在では、教育関係の事業者が新たに職員を雇い入れる場合、まず当人の了解を得てDBSに性犯罪歴の有無や内容を照会します。その後、DBSは政府機関や裁判所が所有する犯歴データを当人や事業者に通知します。これによって、過去に性犯罪に手を染めた人物の雇用を回避することができるわけです。ちなみに英国のDBSは法律や制度の名称ではなく、公的機関の名称です。

 ドイツでは2010年から、子どもと接する職場への就職・配置には「無犯罪証明書」の提出が義務付けられました。2012年には対象をパートタイム職員やボランティアにも拡大しています。フランスでも同様の仕組みが整備されています。

 ところが、日本では、性犯罪歴のある大人が子どもと接する職業に就くことを禁じる法律はありません。過去に子ども相手に性加害をした大人が、再び子どもと関わる仕事に就くことが容易にできてしまうのです。子どもを対象とする性犯罪は再犯率が高いとされ、対策は急務でした。

 しかし、未然防止に向けた制度化の議論はなかなか始まりませんでした。そんな状況を動かしたのは、こども家庭庁の発足とキッズライン事件です。