自民党が、裏金で揺らいでいる。派閥解消や内部調査など刷新感のアピールに躍起だが、その“お手盛り感”に国会論戦でも追及が集中。世論の不信と失望を映し出すかのように、各種調査での政権・自民党支持率は“超低空飛行”という状態だ。「国民の浄財」たる、この政治資金。不正を許したその本質は何だったのか。抜け穴をふさぐにはどんな打ち手があるのか。そして、私たちはどんな姿勢で政治を監視すべきか。一連の事件の契機となった刑事告発をした、神戸学院大・上脇博之教授に聞いた。(JBpress編集部)
告発の枠を超えて動いた特捜部
――上脇先生の告発が契機となった自民党派閥の裏金問題は3議員らが立件され、略式起訴された谷川弥一氏の有罪がまず確定しました。東京地検特捜部による刑事捜査ということに関しては、どのように評価していますか。
上脇博之・神戸学院大教授(以下、上脇氏):一定の評価はしていますが、最後はなんか腰砕けに終わっちゃったなと。そこは残念だなと思っています。
まず、僕の告発は必ずしも「裏金」ではありませんでした。あくまでも、政治資金規正法で定められている20万円超のパー券収入の明細を記載していなかったという指摘です。
裏金が作られていたという証拠が当時あったわけではありません。ただし、その20万円超の明細を書いていないというのが一つや二つではなかった。2018年、19年、20年と調べてみると、毎年たくさん、それも各派閥である。
どう考えても組織的であり、何のためにこんなことをするんだろうと考えれば、裏金を作るためじゃないかと思ったのです。そこで、告発状の最後の方に、「これは裏金が作られている可能性があるので、そこまで捜査してください」ということを付記しました。
世間では、僕が裏金を告発したと勘違いされているかもしれませんが、たしかに裏金が作られたという疑いを持ちながらも、あくまで告発そのものは20万円超のパー券収入明細不記載についてだったということです。
特捜部が、その告発の枠を超えて、僕が付記しておいた裏金まで捜査してくれたという点では、一定の評価をしています。